プロジェクト概要
幅広い知識が必要な井堰設計を
若手社員が担当
河川から農業用水を取水するための施設として、
約40年前に築造された
兵庫県北播磨地区の和田井堰。
経年劣化により部分的な破損や流失が見られたため、
大規模な改修が行われることとなり、
メインである土木設計を若手社員が担当しました。
周囲の環境に配慮した井堰を設計し、
工事中も取水できるよう計画を立てるところまでの
取り組みをご紹介します。
O・A
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T・K
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制作秘話
- 何度も現場に赴き、
周囲の環境に配慮した井堰に。
周囲の環境に配慮した井堰に。
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T・K そもそも土木の設計には、幅広い知識が必要ですが、中でも井堰は、建築の知識も環境への配慮も必要です。O・Aさんは若手メンバーの中でも一番井堰に精通していたので、今回のメインである土木担当に抜擢しました。 O・A 小規模な井堰の設計を担当したことはあったので、その経験を生かして主体的にプロジェクトを動かしていきたいと思ったんですが、自分の作業も進めながら、地質や測量、建築設計を担当するメンバーともやりとりして…というのは初めてで、そこは苦労しました。 T・K まず、基本条件の整理から大変だったんじゃない? 水の取り方はどうするか、魚の遡上を助ける魚道は必要かなど、色々調べなきゃいけないことがあって、それが終わらないと設計にかかれない。 O・A そうですね。取水量についてなどは資料をお借りできましたが、細かな高さの確認や工事車両が通れるかのチェックなど、プロジェクト開始から終了までに8回くらい現地に足を運びました。実施設計を終えて工事が始まってからも、個人的に気になって休みの日に見に行ったりしましたし。 T・K 毎年、冬になると「行ってきました!」って報告してくれたよね。(笑)
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O・A 魚道に関しては、OJT研修中の新人・K・Nくんに担当してもらったんですが、指導担当は初めてだったので、そこもT・Kさんに教えてもらいつつでしたね。よく「手じゃなくて、頭を動かしや」ってアドバイスをもらいました。 T・K 考えるのはO・Aさん、実際に手を動かすのはK・Nくんに、ってね。僕がK・Nくんを連れて川沿いを歩きながら、他の堰にはどんな魚道が設置されているか調査して、構造を決めていったんだけど、K・Nくんはひたすら歩かされて大変だったと思う。(笑) O・A 最後に、発注機関の方も参加される技術検討会の意見を受け、魚が入りやすいようブロックの高さも調整して、おかげさまで良い魚道ができましたね。
- 最後まで難航した操作室の配置
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T・K もう一つ苦労したのが、操作室の配置かな。 O・A 最初に計画した場所の隣地に太陽光パネルができて、その土地の所有者さんから建設の許可が下りず…。交渉自体は発注者様がされるので、私は説明に行っていただく際の資料を作ったり、こんな風に説明していただきたいとお伝えしたりしました。資料作りに関しては、T・Kさんに「分かってる頭で作った資料では伝わらない」とアドバイスいただいたのも印象深いです。 T・K 打ち合わせ前に資料を見せてもらって、O・Aさんが作った資料をもうちょっと噛み砕いたり、分かりやすくするために手を入れたり。色んな人を相手にするから、少しでもそのフォローができればと思ってね。 O・A なかなか交渉が進まず、どんどん期日も迫ってきて、毎日祈るような気持ちでしたが、T・Kさんに相談したり、他の先輩に話を聞いてもらったりしたので、抱え込み過ぎることはなかったです。
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T・K それはよかった。基準書がないもの、正解がわかりにくいものについては、多くの人に相談して、妥当な意見を聞きながら、全体を眺められるようにしてほしいと思って、そういう環境を作るように気をつけてたから。 O・A 最終的に、別の場所へ設置することになりましたが、決定後、もう一度調査に行き、植樹されている桜をできるだけ切らないようにしたりと、最善は尽くせました。 T・K その後の流れはわりとスムーズだったよね。 O・A はい。工事を2年ではなく3年かけて行うことで、工事中もこれまでと同じように農業用水を取水できるようにしたので、地元の方の理解も得ることができました。 T・K O・Aさんにとって、ここまで大規模な井堰設計は初めてだったけど、僕としては「よくやった!」の一言。 O・A ありがとうございます。これからも、井堰など河川構造物設計ならO・A、と言っていただけるよう頑張っていきたいです。
設計概要
2017年1月に業務受注。2~3月に発注者との初回協議があり、現地調査を開始。河川管理者との協議を経て、7月より詳細設計へ。同年12月の地元説明会にて工事の内容や影響を説明した後、2018年3月、設計図面、報告書などを発注者に納入しました。
特長
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- 工事中も農業用水を取水できるよう配慮した3カ年の工事計画
- 現状の堰を壊してしまうと、新しい堰ができるまで農業用水を取水できなくなるため、堰を半分ずつ残しながら、3年かけて工事を進める計画を立てました。
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- 水が少ないときにも魚が入りやすい魚道を設置
- 堰によって魚の遡上が妨げられないよう、魚道を設置。川の水が少ないときでも、魚が入りやすいよう、ブロックの高さを調整しています。
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- 使用する方たちのことを一番に考えた井堰可動の操作性
- 井堰完成後、その上げ下げの操作を行うのは地元の人たちです。ご意見を伺いつつ、ボタン一つで安全に操作できるものにしました。
建造物 | ゴム引布製起伏堰 |
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発注者 | 兵庫県北播磨県民局 加古川流域土地改良事務所 |
所在地 | 兵庫県三木市 |
概要 | 一級河川加古川水系美嚢川に設置するゴム引布製起伏堰の実施設計 |